蘆田裕史+水野大二郎 責任編集『vanitas』No. 007

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ためし読み

特集=ファッションとジェンダー

introduction

昨今、アカデミズムのみならず社会全体において「ジェンダー」に関するトピックがさまざまに議論されています。いわゆるジェンダー論やフェミニズムに加え、クィア・スタディーズや男性学といった学問分野が人口に膾炙しはじめているといえるでしょう。言うまでもなく、ジェンダーの問題にはファッションも大きく関わっています。たとえば、私たちが他者のジェンダーを判別するとき、その根拠の多くはファッションにまつわるもの—髪型やメイクも含めて—です。前を歩いている人がスカートをはいていれば、その人を「女性」だと認識する場合が多いでしょう(それが適切かどうかは別として)。

スカートが女性というジェンダーに結びつけられている、というのは言わずもがなです。歴史を振り返らずとも、スカートの構造を知らずとも、子どもですらそう思い込んでいます。しかしながら、スカート(=衣服)が私たちにとってどのような意味を持つのか、換言すれば「人はなぜ衣服を着るのか」という問いの答えは、ジェンダー論やフェミニズムの議論だけを追っていても考えることができません。それゆえ、ファッション研究の側からもジェンダー論にアプローチする必要があるのです。そうしなければジェンダー論は進展しないと言っても過言ではありません。

とはいえ、今号の特集のみでファッションとジェンダーのあらゆる側面を網羅することはできないので、いくつかの視点を提供できればと考えています。具体的に言えば、これまでの号でもずっと通奏低音として響いているテクノロジー、衣服と切り離すことのできない身体、世の中に商品として流通する衣服を制作するファッションデザインという行為など、いくつかのトピックとからめながらジェンダーについて考察するための契機が散りばめられています。

制作にあたってテクノロジーを取り入れ、かつその作品にジェンダーの問題が見え隠れする(ように思われる)HATRAの長見佳祐氏へのインタビュー、スペキュラティヴ・デザインやデザイン・フィクションの手法によって身体やジェンダーの問題を可視化させるデザイナー/アーティストの長谷川愛氏へのインタビュー、ファッションとテクノロジーを架橋するクリエイティブ・コンサルタントの市川渚氏とヴァーチャルリアリティやウェアラブルテクノロジーといったテーマを扱う身体情報学の研究者・檜山敦氏との対談、シェットランド諸島のニットウェアのガンジーの生産者が女性であることに着目する原山都和丹氏の論文、映画『エクス・マキナ』からサイボーグと女性性について分析する増野朱菜氏のエッセイを掲載し、さらにジェンダーをテーマとする展覧会や書籍の紹介を行いました。そのほか、特別に掲載許可をいただいたアネケ・スメリク氏のイリス・ファン・ヘルペン論に加え、難波優輝氏、増永菜生氏、小田昇平氏、工藤源也氏の公募論文も力作揃いです。

本誌を通じて、読者のみなさんがこれからの社会をよりよく生きるための手がかりを見つけられることを期待します。

interview

  • 長見佳祐(HATRA)
  • 長谷川愛
  • 市川渚+檜山敦

paper

  • 原山都和丹「手編みのユニフォーム―シェットランドのガンジー」
  • アネケ・スメリク「フラクタルの襞―イリス・ヴァン・ヘルペンのファッションデザインへの新しい唯物論からのアプローチ」
  • 難波優輝「身体のないおしゃれ―バーチャルな『自己表現』の可能性とジェンダーをまとう倫理」(公募)
  • 増永菜生「『イタリアらしさ』が生まれるとき―2010年代後半のドルチェ&ガッバーナのショーを例に(公募)
  • 小田昇平「転移をうみだすアクセサリ―ジンメル、ラカン、バルト、メゾン・マルタン・マルジェラのアクセサリをめぐって」(公募)
  • 工藤源也「フセイン・チャラヤンのファッション・デザインにおける身体の相補的関係―モビリティの発達と私たちの身体のゆくえ」(公募)

international perspective

critical essay

  • 増野朱菜「サイボーグはウェディング・ドレスの夢を見るか?―サイエンス・フィクションがサイボーグに女性性を与えるとき」

afterword

本書の概要

責任編集 蘆田裕史+水野大二郎
編集・DTP 太田知也(Rhetorica
アートディレクション、デザイン UMA/design farm
表紙図版提供 HATRA
発行日 2021年7月26日
四六判変型、192ページ
ISBN 978-4-908251-14-6
1980円(本体1800円+税10%)

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蘆田裕史×水野大二郎×藤嶋陽子「ファッションの批評と研究の未来を考えよう」
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