ファッションの批評誌『vanitas』No. 005

蘆田裕史+水野大二郎=責任編集

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ためし読み

特集=ファッション・デザイン・アート

introduction

「『ファッションはアートなのか』という、半ば不毛な問いはいつまで立てられ続けるのだろうか」。そのような疑問が今号の特集「ファッション・デザイン・アート」の出発点にあります。アートを広く芸術の意味で捉え、そのサブカテゴリーに絵画や彫刻、デザインや映画、マンガや工芸などを位置付けるのであれば、もちろんファッションもそのサブカテゴリーのひとつとなるでしょう。しかしながら、アートを狭義の――絵画や彫刻などの――ファインアートと理解するのならば、それとファッションは違うものであることは言わずもがなでしょう。

とはいえ、ファッションとファインアートもまったくの無関係というわけではありません。欧米では、20世紀におけるファッションとファインアートの関係を検証するような展覧会が少なからず開催されているように、互いに目配せをしてきたともいえます。一方で、ファッション――正確に言えばファッションデザイン――はデザインの一分野でもあります。ただし、産業のあり方やビジネスの慣習など、他のデザインの領域と異なる点が多いことも事実でしょう。

今号では、ファッション・デザイン・アートがそれぞれ独立したジャンルであることを前提としながらも、現在において各分野がどのような関係を結びつつあるのか、多様な側面からの検証を試みます。インタビューでは、東京藝大で美学を学んだファッションデザイナーの小野智海氏、ファッションデザイナーやスタイリストとのコラボレーションも多い演劇作家の藤田貴大氏、Google の「プロジェクト・ジャカード」の開発にも携わるデザイナー/アーティストの福原志保氏の三者に話を聞いています。論文では、先述のファッションとアートをめぐる展覧会の意義を明らかにする利根川由奈氏、バイオファッションという新しい動向を探る高橋洋介・川崎和也両氏のテクストを掲載しています。その他、書籍紹介や展覧会紹介などでも本特集と共鳴するテーマを忍ばせています。

本誌は編者の見解を押しつけたり、明確な答えを提供したりすることは目指しておりません。読者諸氏が自身の見解を持つきっかけを提供すること、それさえできていれば私たちの目標は達成されたと言えるでしょう。本誌がファッション・デザイン・アートをめぐる思考を深める契機になることを願います。

interview

paper

  • 利根川由奈「20世紀のモードとアートにおける時間と作家性――1980年代以降の展覧会を手がかりに」
  • 高橋洋介「バイオファッションにおける半生命的素材の諸問題」
  • 川崎和也「バイオファッションデザインの探求[1]――技術と衣服のあいだを調停する思索的ファッションデザインは可能か」
  • 難波阿丹「ユニクロのAir-Rhythm――インターフェイシングと触覚的価値の再創出」(公募)
  • 井上一紀「アンリアレイジとモダニズムへの一度目の遡行」(公募)

international perspective

  • 研究機関紹介
    ストックホルム大学ファッション研究センター https://www.ims.su.se/english/centre-for-fashion-studies
  • 展覧会紹介
    「ファッションの未来は今」
    「ドリス・ヴァン・ノッテン――インスピレーションズ」
    「ファッションとアート:1960年~1990年」
    「イヴ・サン=ローラン」
  • 書籍紹介
    ティモ・リサネン、ホリー・マッキラン『ゼロ・ウェイスト・ファッションデザイン』
    アニタ・ジェネヴァ、キャサリン・モリワキ『ファッションとテクノロジー』
    ジュディス・クラーク&エイミー・ドゥ・ラ・ヘイ+ジェフリー・ホースリー『ファッションを展示すること──1971年以前/以降』
    ディディエ・フェルファーレン編『ザ・ベルジャンズ――意外なファッションのストーリー』
  • 研究者紹介
    ヨハネス・レポネン(『Address』) http://www.addresspublications.com/magazine

critical essay

  • 上別府往輝「クリストバル・バレンシアガ論考」
  • 中西雄祐「『台東デザイナーズビレッジ』から考えるファッションデザイナーの支援のあり方」

afterword

本書の概要

責任編集 蘆田裕史+水野大二郎
アートディレクション、デザイン UMA/design farm
発行日2018年3月15日
四六判変型、176ページ
ISBN 978-4-908251-06-1
定価 本体1800円+税

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