個性あふれる牛たちとの友情にみちた物語

イギリスのオーガニック農場「カイツ・ネスト・ファーム」で暮らす牛たちの日常(と事件)を、愛情豊かに描いたエッセイ。自然な環境のもと、名前のある「個人」として一頭一頭と接する日々で経験した、牛たちの家族や仲間との絆、出産や死に際しての行動は、ときにユーモラスで、ときに深く心を打つ。人間と動物のあるべき関係を知ると、身近な動物もいとおしくなる。カズオ・イシグロほかで知られる出版社フェイバー&フェイバーから2017年に刊行され、「動物文学の新たな名作」「小さな古典」と英各紙誌絶賛。

取扱店一覧(2018年11月8日現在)

 推薦コメント 

まさに目からうろこの一冊である。物言わぬ動物たちが、何も言わないからといって何も考えていないわけではないことを教えてくれる。
――アラン・ベネット(『やんごとなき読者』著者/本書序文より)

知的な発見に心奪われる、チャーミングな物語……魅惑的、感動的で、読み手の心をとらえて離さない。動物文学の棚に新たな名作が加わった。
――リディア・デイヴィス(『ほとんど記憶のない女』著者)

牛たちの知性をめぐる、美しく、心のこもった小さな本。
――ジェイムズ・リーバンクス(『羊飼いの暮らし』著者)

これは小さな古典だ。どこかユーモラスだが、おもしろさは作りものではない。登場する牛たちは、それぞれに豊かな内面と、多様な個性をもっている。著者は長年にわたる経験から、効率ではなく動物のことを第一に考えた農場経営について真摯なメッセージを投げかけている。
――フィナンシャル・タイムズ

 「はじめに」より 

牛たちが遊んだり、体を舐めあったり、小競り合いをする様子を目にするとき、それがきょうだいなのかいとこ同士なのか、友達なのか仲が悪いのかを知れば、知らなかったときとはすっかり違う光景が立ち上がってくる。また、牛たちの関係性がわかれば、オスの子牛は弟の面倒をよく見ることや、姉妹は常に一緒にいるか避けあうかのどちらかだということ、さらに牛の家族にはひとところに集まって寝る家族と、そうでない家族があるといったことが見えてくる。

牛は人間と同じくらい個性に富んでいる。利口な牛もいれば、鈍い牛もいる。人なつこかったり、慎重だったり、けんか早かったり、おとなしかったり、独創的だったり、ぼうっとしていたり、プライドが高かったり、恥ずかしがり屋だったりする。ある程度の規模の農場なら、いまあげたような性格の牛はだいたい揃っているはずだ。わたしたちの牧場では長年にわたって、そんな動物たちの個性を尊重し、それぞれを“個人”として扱うことを理念に掲げてきた。

わたしの両親が農場経営をはじめたのは、一九五三年のことだ。わたしは生後一二日、兄のリチャードはもうすぐ三歳になろうとしていた。はじめは乳牛五頭と中古のトラクター一台からのスタートで、電気も電話もなかった。

やがて、エアーシア種の乳牛を少しずつ買い足し、ウェセックス・サドルバック種の豚も飼うようになる。野ウサギの多い土地は、作物を育てるのには向いていなかった。

当時、国の補助金は、設備の増強に対して交付されていた。政府は、最新の機器を導入するよう圧力をかけた。両親は、自然な環境で動物を育てたいという考えをもっていたが、有機農法という言葉すら知らず、国の方針と違う道を進むにはそれなりの時間がかかった。ただ、ふたりともはじめから心に決めていたのは、動物に敬意をもって接し、快適な環境で育てようということだった。

幼いころ、父や母はよくわたしに“お話”を聞かせてくれた。そこにはいつも、牛や豚や鶏や小鳥が登場した。そんな動物たちの物語を、今度はわたしが語り部となって語り継ぐことができればうれしい。

 目次 

アラン・ベネットによる序文
はじめに
牛たちの知られざる生活
必要は発明の母/アリスとジム/母と娘/ジェイク/人間もときには役に立つ/肉親を亡くしたとき――バンブル一族の話/眠りについて/鳴き声が物語ること/牛はよい判断をする/牛にうわべのつき合いはない/一筋縄ではいかない雄牛たち/ファット・ハット二世/牛にも好みがある/目は口ほどにものを言う/牛の記憶力/馬について/羊、豚、鶏について/難しい出産のときも、牛は正しい判断をする/ディジー一族の話/農場では日々事件が起こる/体を使ったコミュニケーション/グルーミングについて/ミルクにも個性がある/子牛は遊びを考案する/忘れがたきアメリア/鶏は遊び好き/鶏の新たな一面/ふたたびアメリアの話/野鳥の話/自己治癒力について/リトル・ドロシーの話
牛について知っておくべき20のこと
鶏について知っておくべき20のこと
羊について知っておくべき20のこと
豚について知っておくべき20のこと
カイツ・ネスト・ファームについて
参考資料
訳者あとがき

 試し読み 

 ロザムンド・ヤング 

イングランド、ウスターシャー州生まれ。生後すぐに両親がオーガニック・ファームの経営をはじめ、のちに兄とともに農場経営に加わる。1980年からは、兄とパートナーとともにカイツ・ネスト・ファームを営み、動物の行動の自由を尊重し、管理を最小限にとどめるスタイルで、牛をはじめ、羊、鶏、豚を飼育している。
http://thesecretlifeofcows.co.uk

 訳者 石崎比呂美 

翻訳家。大阪府生まれ。英米文学翻訳家の田村義進氏に師事する。訳書に『僕の心がずっと求めていた最高に素晴らしいこと』(辰巳出版)、『競争と協調のレッスン』(TAC出版)などがある。両親から引き継いだ大阪府内の田んぼで、米作りも行なっている。

 本書の概要  

書名 牛たちの知られざる生活(原題:The Secret Life of Cows)
著者 ロザムンド・ヤング(Rosamund Young)
訳者 石崎比呂美
カバーイラストレーション agoera
本文イラストレーション アンナ・コスカ(Anna Koska)
デザイン 佐藤温志
四六変型判(179mm×128mm)、上製、176ページ
ISBN 978-4-908251-08-5
定価 本体1600円+税
発売日 2018年7月31日

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